小学生以下のお子様は全ての試合を無料で観戦できます――。サッカーJ1リーグの鹿島アントラーズは今シーズン、茨城県鹿嶋市にあるカシマスタジアムでのホームゲームにおいて、子どもたちの観戦を促進する取り組みを開始しました。この取り組みの狙いについて、小泉文明社長にお話を伺いました。
(※2024年5月17日(金)朝日新聞の記事を参考に要約しています。)
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小学生以下を無料にした理由
「昨年、観客数がようやく新型コロナウイルスの影響が出る前の水準に戻ってきました。中長期の戦略を考える中で、『投資するのは未来じゃないか』と考えました。将来のアントラーズを考えたとき、若い子どもたちを取り込まなければ、どんどん先細ってしまいます。子どものころに観戦したインパクトは大きいですし、若いときにアントラーズファンになれば、なかなか離れないものです。」
全国の子どもたちを対象に。その大胆な発想は?
「アントラーズは関東一帯から来るファンの方々が多いという特徴があります。例えば、東京に住むファンが子どもの同級生を連れて行こうと思ったときに、『無料だから』と言えば、連れて行きやすくなります。少しでもお財布に優しくし、来場率を上げる狙いがあります。」
「大都市圏のクラブとは異なり、私たちのホームタウンでは人口が減る可能性が非常に高いです。その危機意識は全く異なります。一番大事なのは、20年、30年後もスタジアムを満員にすることです。そのために、この投資はコストパフォーマンスが合うと判断しました。」
上層部は「収益化難しい」と難色を示したが
「無料と言っても、使用するのは普段観客がなかなか入らないカシマスタジアムの上層エリアです。収益化できていない場所を未来のために開放しようという発想です。」
「上層エリアの小学生のチケットは1400円でしたので、それほどクラブの負担も増えないと考えています。お子さんが来たいとなれば保護者もついてきます。今までスタジアムに来なかった人が足を運ぶ可能性が増えるでしょう。」
無料施策の効果をどう見込んでいるのか
「Jリーグのデータを見ると、3回スタジアムに足を運ぶと習慣化するという傾向が見られます。私たちにとっては、最初のハードルをいかに下げるかが重要です。」
「無料招待でも、ウェブ上でJリーグIDの登録が必要になるので、様々なデータを追跡したり、メールを送ったりしてマーケティングを行うことができます。例えば昨年、国立競技場で行った無料招待では、その後、2~3回と足を運ぶかどうかのデータを取りました。一度見ていただくきっかけがあれば、ファンが面白いと感じてくれる手応えがあります。」
無料券を配ると、慣れてお金を払わなくなる、とも言われますが?
「スタジアムを埋めるために無料招待をするのではなく、クラブとしての投資対効果が合わないといけません。これはあくまで将来への投資です。いわゆる紙のチケットをばらまくということは行いません。必ずJリーグIDに登録していただき、クラブが継続的なコミュニケーションを取れるような形で招待施策を行うことが大事です。」
将来的に中高生にも広げたい!
ファミリー層へのアプローチは課題です。
「グローバル(世界)を見たときのJリーグの良さは、スタジアムの安心・安全だと思っています。Jリーグが土日の娯楽として選ばれるコンテンツになりたいです。」
「若い子たちは『タイパ(タイムパフォーマンス=時間対効果)』を非常に重視していると感じます。ネットフリックスで動画を見るよりも、リアルなフットボールを観戦する方が良いと感じてもらえるようなものを、私たちは提供しなければなりません。」
将来的な構想と目指す姿とは
「無料の対象範囲を中高生に広げたいと考えています。特に、自分たちだけでもスタジアムに来られる中学生には、広げても良いと思います。東京から来る場合、バスの往復などを含めて1回あたり7千~8千円かかります。少しでも若い子たちの負担を減らしてあげたいと考えています。」
「人口が減少し、10年後、20年後にはさらにコンテンツ間の競争が激しくなるでしょう。できるだけ子どものころに感動的な体験をしてもらい、アントラーズを生活の一部にしていただく必要があると考えています。」
多くの小学生にたくさんの写真を撮って楽しんでいただきたいですね。