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ノーヒットノーラン達成!その時、NBP公式記録員は

2024/12/17スポーツと写真

試合が進むにつれて、緊張感はますます高まっていきました。ペンを手にしながら、じっとグラウンドを見つめ・・・。
5月24日、阪神甲子園球場で行われたプロ野球の阪神対巨人戦。この試合で、巨人の戸郷翔征投手(24歳)が自身初のノーヒットノーランを達成しました。
その瞬間を写真に収めようと、球場中の皆がカメラを向けています。一方でNBPの公式記録員は写真ではなく公式記録として残していました。
(※2024年6月6日 朝日新聞の記事を参考に要約しています。)

巨人の戸郷投手、88年ぶりの快挙を達成!甲子園でのノーヒットノーラン

プロ野球において史上89人目、通算101度目となる快挙が生まれました。巨人の投手が甲子園での阪神戦でノーヒットノーランを達成したのは、1936年の沢村栄治投手以来、実に88年ぶりのことでした。
「やっと緊張から解放されました。最高です」
九回二死二塁、空振り三振で27個目のアウトを奪った戸郷投手は、喜びを声に表しました。ヒーローインタビューが響くバックネット裏で、彼と同じく、見守っていた関係者も胸をなでおろしていました。

NPB公式記録員の緊張と達成感。ノーヒットノーランを支えた裏方の仕事

日本野球機構(NPB)の公式記録員である足立大輔さん(32歳)は、「七回あたりからずっとドキドキしていました。終わった瞬間にホッとして、『ああ、達成したんだ』と感じました」と語りました。
試合中、安打や失策などを判定しながら、手元のスコアシートに各打者の結果を一球一球、細かく記録していきます。平均で約3時間にわたる試合の間、一瞬たりとも目を離すことのできない職務です。1軍の試合ではメインとサブの2人1組で記録を担当します。

快挙を支えた一瞬の判定、記録員の冷静な判断が光る

この試合では、安打か失策か判定が難しいプレーがありました。三回二死、阪神の9番打者、及川雅貴選手の打球が投手前のやや三塁側に転がりました。戸郷投手は素早くマウンドを降りてボールをつかみ、一塁へ送球しましたが、送球がそれてしまいました。
数秒後、電光掲示板には失策を示す「E」のランプが点灯しました。このプレーが安打と判定されていれば、戸郷投手の快挙は達成されていなかったことになります。
足立さんは冷静に振り返ります。「投手はしっかりした体勢で送球していましたし、通常の送球でタイミング的にはアウトだったと判断しました。そもそも打ち取られた打球であり、内野安打とする理由はありません」と毅然と語りました。

野球少年が歩んだ道。記録員として歴史的瞬間に立ち会う喜び

足立さんは、かつての野球少年でした。東京都出身で、小中学生の頃から家族や友人とプロ野球の試合をよく観戦していたそうです。何度も球場に足を運ぶうちに、自然と野球の見方も変わっていき、「安打か失策か、どっちだろう?」といった細かなプレーにも目を向けるようになりました。完全試合の記録も担当した経験について「歴史的な場面に立ち会えて光栄です」と語っています。

野球愛と緊張の中で・・・公式記録員としての誇りと挑戦

東京・世田谷学園高校から国士舘大学まで野球を続けてきた足立さんは、卒業後に食品関係の会社から内定を得ていましたが、「野球に関わる仕事をしたい」という思いが勝りました。2014年、NPBの公式記録員募集をホームページで知り、応募。100人以上の中から選ばれ、1人だけの採用を勝ち取りました。
現在NPBの公式記録員は25人で、欠員が出た場合のみ補充されます。今春、7年ぶりに採用が行われました。記録員は年間約50試合をメインで担当し、500試合、1000試合といった節目で表彰されます。入局11年目の足立さんは、歴史的な試合に携わる機会が多く、「持っている」と同僚から評判です。2022年4月10日には、28年ぶりに達成されたロッテ・佐々木朗希投手の完全試合も担当し、「歴史的な試合に関われて光栄です」と照れ笑いを浮かべました。
しかし、記録員としての仕事は重圧との戦いでもあります。「自分の判断ひとつで選手の成績が変わる」という思いが常に頭をよぎり、試合後に判定の確認のため映像を見返すことも少なくありません。そのため、試合開始2時間前には席についてシートノックでグラウンド状態や風向きを確認し、甲子園球場のような独特な球場では特に慎重に臨みます。また、試合前夜の食事で生ものを控えるなど、体調管理にも万全を期しています。

記録に名を刻む「誇り」公式記録員が繋ぐプロ野球の歴史

NPBでは、プロ野球が始まった1936年から現在までの全試合のスコアシートが保管されています。王貞治氏による歴代最多通算868本塁打や、ヤクルトの村上宗隆選手が達成した日本選手最多の年間56本塁打も、記録員が1本1本記したデータの積み重ねによるものです。

「担当した試合には自分の名前も記録として残ります。大きなやりがいを感じています」。そう語りながら、記録を紡ぎ、野球の歴史を未来に繋いでいくため、今日もまた一球一球に集中して目を凝らしています。